主婦でも自己破産はできる? 借金に悩む主婦の方へ、解決法をお伝えします

2022年01月11日
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主婦でも自己破産はできる? 借金に悩む主婦の方へ、解決法をお伝えします

東大阪市では、生活困窮者についての早期支援および自立促進を図る目的で、自立支援に関する相談や就労支援・家計改善支援などの事業を行っています。主婦が家計のコントロールをうまくできずに生活に支障が生じているような場合には利用してみてもよいかもしれません。

専業主婦であってもキャッシングやローンを利用することができますので、返済ができずにお悩みの方もいるかもしれません。夫や家族に内緒で借金をし、債務整理をしようとしても、夫や家族にバレてしまうことをおそれてなかなか前に踏み出せない方もいるかもしれません。しかし、主婦でも適切な債務整理の方法を選択すれば、夫や家族に知られることなく債務整理を行うことができる場合があります。

今回は、借金に悩む主婦に向けて債務整理の方法について、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。

1、身内に知られずに自己破産は難しい

借金の返済が困難になった場合、自己破産という債務整理手続をとることによって、返済を法的に免除してもらうことができます。では、自己破産をする場合には、家族や身内に内緒で進めることはできるのでしょうか。

  1. (1)自己破産とは

    自己破産とは、裁判所を介して行う債務整理の一種です。裁判所に対して破産申し立てを行い、免責許可決定を得ることで返済を法的に免除してもらうことができます。なお、財産額として一定以上保有している場合には、所有財産を換価して債権者に分配しなければなりません。債務者が財産を保有したままですと、債権者との関係で著しく不公平な結果となります。

    主婦の場合、ご自身の名義で高額な財産を有していることは少ないかもしれません。多重債務の状態に陥り、返済が困難になっているような状況であれば、自己破産をしたとしても財産を失うというリスクは少ないといえます

  2. (2)家族に内緒で進めるのが難しい理由

    主婦の場合、家族に内緒で借金をしていることもあり、自己破産をする際にも家族に知られてしまうのではないかということが一番の心配事となるでしょう。自己破産は借金をした本人の債務を整理する手段ですので、借金の名義人ではない夫や家族などは破産手続には直接関係してきません。ただし、以下のような事情がある場合には、家族に発覚してしまう可能性もあります。

    ① 自由になるお金がない
    自己破産をするためには裁判所に予納金を支払わなければなりません(ただし、都道府県によって支払い義務の有無や金額が異なります)。借り入れの理由が生活費の不足を補うためのものであった場合には、同時廃止事件という手続類型に従って予納金の額は1万5000円程度ですが、浪費やギャンブルなど免責不許可事由がある場合には、管財事件という手続類型に従って予納金の額は20万円程度になります。

    予納金に加えて、弁護士に自己破産を依頼する場合には弁護士費用も必要となります。自由に使うことができるお金がない場合、家族に援助を求めなければならず、その際に借金の事が発覚し、自己破産をすることが事実上難しくなります。

    ② 家族の収入関係資料の提出が必要
    自己破産の申し立てをする裁判所によっては、本人の収入関係資料(給与明細、源泉徴収票、所得証明書など)のほか、同居家族の収入関係資料の提出が求められることがあります
    専業主婦が家計を管理しており、普段から家族の給与明細や源泉徴収票を保管している場合には特に問題はありませんが、そうでない場合は家族の協力がなければ自己破産の申し立てをすることが極めて困難となります。特に、問題なく家族から給与明細や源泉徴収票をもらうことができればよいですが、「何に使うの?」などと理由を聞かれてしまうと自己破産が発覚してしまう可能性があります。

2、自己破産手続きの流れ・かかる費用

自己破産をする場合の一般的な手続の流れ・費用は、以下のとおりです。

  1. (1)弁護士への相談・依頼

    継続的な借金の返済が困難になった場合には、まずは弁護士に相談してください。弁護士に相談をすることによって最適な債務整理の方法を提案してもらうことができます
    借金の総額や収支状況を踏まえ、自己破産が最適であると判断した場合には弁護士に自己破産申立手続を依頼されると良いでしょう。

  2. (2)受任通知の発送、申し立て準備

    依頼を受けた弁護士は、債権者に対し、受任通知を発送します。受任通知とは、担当弁護士が自己破産申立に向けて手続を進めることを連絡する書面です。受任通知が債権者に到達した後は、債権者からご本人に対する取り立て行為は禁止されます。依頼者は、債権者からの督促による不安から解放されます。

    弁護士は、債権者から借り入れおよび返済の取引履歴の開示を受け、債権額を確定させます。並行して、自己破産の申し立てに必要となる書類の準備を行います。必要書類の収集については、弁護士がサポートしますのでご安心ください。

  3. (3)裁判所に自己破産の申し立て

    申し立てに必要となる書類の準備ができた段階で、裁判所に、自己破産の申し立てをします。申立先となる裁判所によって扱いがまちまちですが、申立後、債務者である依頼者の即日面接が行われるところもありますが、基本的には弁護士が対応します
    自己破産の申し立てにあたっては、官報公告費用、印紙代、予納郵便切手として、1万5000円程度の費用がかかります。

  4. (4)破産手続開始決定

    自己破産の申し立てが受理されると裁判所から破産手続開始決定が出されます。ちなみに、「破産手続開始決定」は、借金を免除する旨の裁判所の意思決定と異なりますのでご注意ください。裁判所が最終的に債務者の借金をする意思決定は「免責許可決定」と言います。破産手続開始決定後、事件処理は、同時廃止事件という手続の流れと、管財事件という手続の流れのどちらかに振り分けられます。

    ① 同時廃止事件の場合
    ご本人に高額な財産がない場合や、ギャンブル・浪費で借り入れをしたわけではないなど、借金の経緯に問題がない場合、破産手続開始決定と同時に破産手続は終了します。このような事件を「同時廃止」といいます。
    同時廃止となった場合には、管財事件に比べて短期間で手続きが終了します。なお、「同時廃止」という文言から、破産手続のすべてが終了したかのイメージを持たれるかもしれませんが、そうではありません。もっとも重要な、借金を免除する旨の裁判所の意思決定(「免責許可決定」)はまだ終わっていません。

    ② 管財事件の場合
    ご本人に高額な財産がある場合や、ギャンブル・浪費で借り入れをしたなど借金の経緯に問題がある場合には、破産手続開始決定と同時に裁判所によって破産管財人が選任される手続きに進みます。このような事件を「管財事件」といいます。管財事件では、破産管財人が破産者の財産を換価処分し、債権者への配当する手続をすすめます。配当手続が完了した段階または配当すべき資産がない場合には、破産手続は終了します。
    なお、管財事件となった場合には、予納金として20万円程度必要となることは先ほど申しました通りです。

  5. (5)免責

    破産手続が終了すると、続いて免責手続きに移ります。裁判所から「免責許可決定」を受けることによって、ようやく債務の返済義務が免除されます。

3、自己破産後の注意点

自己破産を申し立てることによって債務を免除されますが、日常生活において以下の点に注意が必要です。

  1. (1)クレジットカードの作成やローンが組めなくなる

    自己破産をしたという事実は、信用情報機関に事故情報として登録されます。これは、いわゆる「ブラックリスト」というもので、クレジットカード会社や消費者金融業者など金融機関が契約者や申込者の返済能力を判断するために確認するデータベースです。

    そのため、自己破産後にクレジットカードを作成しようとしたり、新規の借り入れをしようとしても、返済能力がないと判断されて審査は通りません。

  2. (2)保証人に対して一括請求される

    自己破産によって借金が免除されるのは、あくまでも破産者本人です。保証人、連帯保証人ではありません。借金をする際に親族などに保証人になってもらった場合、保証人は破産者にかわって弁済しなければなりません。

    したがって、保証人がいる場合には、自己破産によって債権者が保証人に対して一括請求してきますので注意が必要です

  3. (3)家族への影響はない

    自己破産をした場合、その事実が官報に掲載されます。しかし、官報は一般の方が目にするものではありませんので官報に掲載されたとしても家族や周囲の人に対して自己破産をした事実が知られることはありません。

    また、信用情報機関に登録される事故情報はあくまでも破産者本人の情報です。そのため、主婦が自己破産をしても、配偶者の信用情報に傷がつくわけではありませんので、配偶者名義であればローンを組むことができます。

4、主婦ができるその他の債務整理

自己破産以外の債務整理としては、以下のものがあります。

  1. (1)任意整理

    任意整理とは、自己破産のように、裁判所を介する債務整理ではなく、債権者との交渉によって行う債務整理です。任意整理をすることで、借金の総額を任意整理依頼時点の元本および利息の総額に確定し、将来発生するであろう利息をカットしてもらったり、返済方法を見直すことによって毎月の返済額を減らし、借金を完済することが可能になります。

    任意整理は、自己破産のように、借金をゼロにする手続きではなく、総支払額を減額し、借金を返済していく手続きになります。そのため、3年から5年程度は返済を継続するだけの余裕が必要になります。専業主婦はご自身の収入がありませんので、家計のやり繰りによって毎月の返済額を捻出する必要があります。専業主婦が家計を管理しているという場合で、かつ、毎月の家計のやり繰りによって返済金を捻出することができる場合は、家族に発覚することなく任意整理を行うことが可能です。

    反対に、自由に使えるお金がない場合は、借金の返済を家族に協力してもらわなければならず、借金の存在が家族に発覚してしまう可能性が高いです。

  2. (2)個人再生

    個人再生とは、自己破産と同様に裁判所を介して行う債務整理の一種です。自己破産のように、借金をゼロにする手続ではありませんが、大幅に減額(約5分の1)したうえで借金を原則3年(最長5年)で返済をしていく手続です。
    しかし、個人再生手続の利用には、継続的に収入を得ている必要があり、専業主婦で収入がないと個人再生手続を利用することは難しいです。

5、まとめ

専業主婦が自己破産を行うことは可能ですが、家族の協力が必要になるケースもありますので、場合によっては、借金の存在や自己破産をしたことが家族に知られてしまう可能性があります。

どのような債務整理の方法が最適であるかは、ご本人の希望だけでなく借金総額や収支状況によって異なってきますので、まずは、弁護士に相談をすることをおすすめします。
借金や債務整理に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスまでお気軽にご相談ください。

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