税金は債務整理できない|滞納するリスクと支払えないときの対処法

2024年03月04日
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税金は債務整理できない|滞納するリスクと支払えないときの対処法

東大阪市役所のホームページでは、市税を滞納した場合、督促状や催告書、電話で納付を促して、それでも納付されなければ財産の差し押さえを行うことがアナウンスされています。

借金の返済で生活が苦しくなった場合は、債務整理という方法で借金の負担を減らすことができますが、税金などの滞納がある場合は、債務整理だけで解決することはできません。

本コラムでは、借金の返済に追われて税金などが払えなくなってしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。

1、債務整理で税金などの滞納は解決できない

債務整理は、キャッシングやクレジットなど借金の返済が難しいときに利用する手続ですが、滞納している税金については債務整理の対象にすることはできません
以下では、債務整理の手続と税金などとの関係について解説します。

  1. (1)債務整理とはどのような手続?

    債務整理の方法には、主に「自己破産」「個人再生」「任意整理」の三種類があります。

    ① 自己破産
    自己破産は、価値のある財産を処分して、借金を免除してもらう裁判所の手続です。

    個人の方が自己破産をする場合は、生活の維持に必要な財産は保有が認められるため、実際にはほとんど財産を処分することなく借金が免除される場合もあります。

    ② 個人再生
    個人再生は、借金を大幅に減額してもらったうえで、原則として3年以内に分割返済する手続です。

    住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円以下であり、給与や事業による継続的な収入があることが利用できる条件になります。
    また、個人再生では、返済中の住宅ローンは維持して住宅ローン以外の借金を減額してもらう「住宅ローン特則」を利用できる場合もあります。

    ③ 任意整理
    任意整理は、債権者と直接交渉して将来発生する利息を免除してもらい、3年から5年で分割返済する方法です。

    借金の元本の減額が認められることはほとんどありませんが、利息が発生しなくなるため、完済までの返済額と毎月の返済額を減らすことはできます。
  2. (2)税金などを債務整理できない理由

    公平な負担が特に求められる税金などの公的負担金には、債務整理の手続でも次のような特別な効力が認められています。

    ・自己破産
    「租税などの請求権」「罰金等の請求権」は非免責債権とされており、債務の支払い義務を免除する免責決定の効力が及ばない。

    ・個人再生
    租税など「一般の優先権がある債権」は一般優先債権とされて、再生手続によらず随時弁済しなければならない。


    つまり、「借金のために税金などが支払えないのであれば、借金の負担を債務整理により軽くしてから、税金などを納付してもらう」というのが基本的な趣旨です。
    そのため、任意整理をする場合も、税金などの減額に応じてもらうことはできません。
    したがって、税金などの滞納はどの債務整理の手続でも対象外となるのです。

  3. (3)債務整理で解決できない公的負担金

    債務整理の対象外となる公的負担金には、「公租公課」といわれる税金や保険料、または刑事罰や行政罰などの罰金があります。
    具合的には、以下のような公的負担金が債務整理の対象外となっています。

    • 国税(所得税、相続税など)・地方税(住民税、固定資産税など)
    • 国民健康保険料・介護保険料
    • 国民年金保険料
    • 刑事罰の罰金・科料・追徴金、行政罰の過料


    なお、公的負担金以外の債務でも、以下のようなものは債権者を保護する必要性が高いために、自己破産では非免責債権、個人再生では一般優先債権または非減免債権とされています。

    • 悪意で加えた不法行為に対する賠償金
    • 故意または重過失によって加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく賠償金
    • 子の養育費
    • 雇用した労働者の給料や退職金


    これらの債務は、債務整理による解決は難しいので、個別に和解による解決を検討する必要があります

2、税金などが支払えないときの対処法

以下では、税金など公的負担金の支払いが難しい場合の対処法について解説します。

  1. (1)窓口で相談する

    期限までの納付が難しい場合や、期限を過ぎて滞納している場合は、まずは速やかに役所の窓口で相談しましょう。

    「借金の返済のために納付できない」という理由だけで減免してもらうことは難しいですが、「債務整理をしてから納付する」という意思があることを伝えるだけでも、次章で解説する滞納処分のリスクを避けるのには有効です。

    相談窓口や減免を受ける条件などは、以下のとおりです。

    種類 相談窓口 減免などの条件・内容
    国税
    (所得税・相続税など)
    税務署
    • 災害や盗難、本人や家族の病気、事業の休廃業などの事情がある場合に納税猶予の申請が可能
    →1年以内の期間(状況に応じて最大2年間)で分割納付
    →延滞税の軽減
    地方税
    (市民税・府民税・固定資産税など)
    市区町村役場(府税事務所)
    • 生活保護の受給、失業、所得が前年の6割以下に減少することが見込まれる場合
    • 天災や火災の被害を受けた場合など
    →減免の申請が可能
    国民健康保険料・
    介護保険料
    市区町村役場
    • 倒産や解雇、雇い止めによる離職
    • 前年度より所得が3割以上減少
    • 震災や火災などにより自宅が被害を受けた場合など
    →減免の申請が可能
    国民年金保険料 市区町村役場
    • 退職や離職、経済的な事情により納付が困難な場合
    →減免の申請が可能
    罰金・科料・追徴金・過料 検察庁 減免に関する規定なし(納付方法について相談可能)
  2. (2)借金の債務整理をする

    借金の返済のために税金や保険料を滞納するような状況であるなら、できるだけ早く債務整理を行ったほうがいいでしょう。
    まず弁護士などの専門家に債務整理の相談をしたうえで、並行して役所の窓口で税金などの支払いについて相談することをおすすめします

3、税金などを滞納するリスク

以下では、税金など公的負担金を期限までに納付しなかった場合に生じるリスクについて解説します。

  1. (1)延滞税・延滞金が加算される

    国税や地方税、国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料を滞納すると、納付期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税や延滞金が自動的に加算されます。
    延滞税や延滞金の利率は年度により変動するほか、以下のように。一定期間が経過するまでと経過した後との二段階で割合が定められています。
    (令和4年・令和5年(2022年・2023年)の利率)

    • 納付期限の翌日から「一定期間」を経過する日まで 年2.4%
    • 「一定期間」を経過した日の翌日以降 年8.7%

    ※「一定期間」とは、地方税と介護保険料の場合は1か月、国税の場合は2か月、国民健康保険料と国民年金保険料の場合は3か月


    個人の方が納める税金や保険料については、延滞税や延滞金はそれほど大きな金額ではないので支払いを後回しにしてしまうこともあるでしょう。
    しかし、以下で解説するように差し押さえに手続が進むこともある点に注意が必要です。

  2. (2)滞納処分による差し押さえ・公売

    前章で紹介した公的負担金のうち、国税、地方税、国民健康保険料、介護保険料、国民年金保険料を滞納した場合は、滞納処分により財産が差し押さえられることがあります

    通常、借金を滞納した場合は、民事訴訟や支払督促などの裁判手続により判決などの債務名義を取得されて強制執行を受ける流れになります。
    しかし、滞納処分の場合には、督促に応じなければ税務署などの判断によりいきなり財産を差し押さえられて、公売手続により売却されることになるのです。
    さらに、差し押さえの対象となる財産は、給料、預貯金、不動産、動産、自動車など、価値のあるものすべてです。

  3. (3)罰金・科料の場合は強制執行や労役場留置も

    罰金や科料、追徴金、過料を滞納した場合も、検察官の徴収命令が発せられて民事執行による差し押さえが可能であるため、「いきなり財産を差し押さえられる」という点では滞納処分と同様です。
    さらに、刑事罰である罰金や科料を完納できない場合は、労役場に留置されることもあるのです。

    労役場留置とは、刑務所などの労役場に収容されて刑務作業に従事させられる処分で、処遇面では懲役受刑者と同様に扱われることになっています。
    労役場に留置される期間は、罰金や科料の言い渡しを受けた際に「罰金を完納できない場合、1日当たり〇〇円に換算して労役場に留置する」と決められているので、未納の金額に応じて日数が決まります。

  4. (4)差し押さえを受けると経済的信用が悪化する

    差し押さえを受けると、対象が預貯金の場合は口座のある金融機関に、給料の場合は勤務先に差し押さえの通知書が送達されます。
    また、不動産を差し押さえられた場合は、差し押さえ登記がされて、抵当権者などに通知されることになっています。
    さらに、差し押さえを受けると、滞納していない借金についても一括請求される可能性があります

    住宅ローンやクレジットカードなど、分割返済をする契約では、別件で差し押さえを受けた場合には期限の利益を失う条項が設けられているのが一般的です。
    「期限の利益を失う」とは、分割払いができなくなり残金を一括で支払わなければならなくなることで、滞納処分による差し押さえを受けたために一括請求される可能性があるのです。

4、借金トラブルは弁護士にご相談を

債務整理を検討されている方は、実際に手続を進める前に、専門家である弁護士に相談しましょう。

① 債務整理の方法を提案してもらえる
債務整理は、借金の金額や収入などの状況によって適切な方法を選ぶ必要があります。

弁護士であれば、借金の種類や税金などの滞納の具体的な状況などを考慮したうえで、最適な債務整理の方法を判断することができます

② 弁護士に債務整理を委任すると催促がストップする
弁護士に債務整理を正式に依頼すると、弁護士から債権者へ債務整理を行う旨を通知され、その段階で催促がストップします
そのために、取り立てにおびえる必要がなく、落ち着いた状況で税金などの相談を進めることができます。

また、債権者への返済も基本的にすべてストップするため、債務整理に必要な費用などを積み立てることも可能です。

③ 裁判所の手続も弁護士に委任できる
自己破産や個人再生は地方裁判所で行う手続ですが、弁護士であれば裁判所の手続も代理人として受任することができます。
また、裁判官と面談する際も弁護士が同席してサポートすることが可能です。

なお、大阪地方裁判所では、弁護士に委任して自己破産や個人再生を申し立てる場合は、裁判所に納める費用が30万円ほど安くなる取り扱いになっています。

5、まとめ

借金のほかに税金などの滞納がある場合は、借金については債務整理を行い、税金などは役所の窓口で支払い方法などについて相談する必要があります。
税金などの滞納を放置すると財産の差し押さえを受けることもあるので、できるだけ早く弁護士のサポートを受けて税金や借金の問題について相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所では、借金の問題に関するご相談は何度でも無料を受け付けております。
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