不倫相手にやってはいけない嫌がらせ|正しい慰謝料請求について解説
- 不倫
- 不倫相手
- 嫌がらせ
慰謝料名目で金銭をだまし取ったとして、大阪府警が夫婦を逮捕したと報道されました。いわゆる美人局の手口で、計画的に用意した不倫現場をネタに、慰謝料を請求していたようです。
この事件では、金銭をだまし取る目的で夫婦が共謀して不倫を演じていましたが、実際に配偶者の不倫が発覚した場合、配偶者や不倫相手に対して強い怒りや憤りを感じるでしょう。不倫相手に対しては慰謝料請求だけでなく、社会的制裁を加えたいと考える方も少なくありません。しかし、正当な権利行使である慰謝料請求とは異なり、社会的制裁などの嫌がらせは違法行為にあたる可能性があります。
今回は、不倫相手にやってはいけない嫌がらせと正しい慰謝料請求の方法について、東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。
1、不倫相手にやってはいけない行為や嫌がらせ
不倫相手に腹立たしい気持ちを抱くのは当然のことでしょう。しかし、嫌がらせなどの行為をしてしまうと、ご自身が罪に問われてしまうこともあります。
-
(1)不倫相手の職場に不倫していることをばらす
不倫相手の職場に不倫をしていることをばらす行為は、不倫相手の社会的評価を低下させるおそれがあるため、名誉毀損罪が成立する可能性があります。
-
(2)SNSなどで不倫を公表する
不倫相手にもダメージを与えたいという思いから、SNSやインターネット上の掲示板などに不倫の事実を書き込んで公表するケースもあります。
しかし、SNSなどでの公表も名誉毀損に該当する行為になるため、絶対にやってはいけません。匿名で投稿したとしても、発信者情報開示請求などの手続きで投稿者が特定される可能性があります。 -
(3)不倫相手に仕事を辞めさせる
たとえば、職場不倫だった場合は、配偶者と不倫相手が不倫発覚後も一緒に働いていると「再び不倫をするのではないか」と不安になり、不倫相手に仕事を辞めさせたいと考えるかもしれません。
しかし、不倫を理由に退職の強制するのは、不倫相手に義務のないことを強いるものであるため、強要罪が成立する可能性があります。不倫相手に仕事を辞めてほしいという希望を伝えることはできますが、退職を強制させることまではできません。 -
(4)不倫相手に対して暴力を振るう
不倫相手に暴力を振るう行為は暴行罪または傷害罪にあたる可能性があります。不倫相手に対して怒りを覚えるのは当然ですが、暴力行為は絶対にやってはいけません。
-
(5)不倫相手に対して嫌がらせのメールや電話をする
不倫相手に対して、嫌がらせ目的で脅迫的な内容のメールを送ったり、電話で不倫相手を脅したりすると、脅迫罪が成立する可能性があります。
このように嫌がらせや違法行為をしてしまうと、不倫相手から損害賠償請求をされるだけでなく、犯罪として刑罰が科されるリスクもあります。
2、不倫相手に対して慰謝料請求できる条件・注意点
不倫相手に対して慰謝料請求できる条件とできないケース、慰謝料請求する際の注意点を解説します。
-
(1)不倫相手に対して慰謝料請求できる条件
不倫を理由として不倫相手に対して慰謝料請求する場合、法的には不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求という形で行うことになります。
不法行為が成立するためには、故意または過失により、権利または法律上保護された利益が侵害されたことが必要です。 -
(2)不倫相手に慰謝料請求できるケース
具体的に、どのようなケースであれば請求できるのかを説明します。
・ 配偶者と肉体関係があった
配偶者との間で不貞行為があった場合には、不倫相手に慰謝料請求が可能です。
不貞行為とは、配偶者と不倫相手が肉体関係を持つことをいいます。
・ 既婚者であることを知っていた
既婚者であると知りながら肉体関係を持っていた場合です。たとえば同じ会社で勤めている同僚であれば、相手が既婚者であることを知っていたといえる可能性が高いでしょう。
・ 既婚者であることを知り得る状況だったのに不注意で気付かなかった
不倫相手が既婚者であることを知らなかったとしても、既婚者であることを知り得る状況だったのに不注意で気付かなかったような場合は、慰謝料請求が可能です。 -
(3)不倫相手に慰謝料請求できないケース
一方で、次にあげるようなケースでは、慰謝料を請求することが難しくなります。
・ 肉体関係がないまたは証拠がない
一緒に食事をしたり、出掛けていたりしていても肉体関係がない場合、慰謝料請求は認められません。また、慰謝料請求する側は肉体関係があったことを立証する必要があります。
肉体関係があったという疑いが強かったとしても、それを立証する証拠がなければ慰謝料請求はできないのです。
・ 故意または過失がない
配偶者と不倫相手がマッチングアプリや出会い系サイトなどで出会ったような場合、配偶者が独身と偽っていることもあります。このようなケースでは、不倫相手に過失が認められない可能性があります。
・ すでに夫婦関係が破綻していた
慰謝料請求をするには、不貞行為により権利または法律上保護された利益が侵害されたといえなければなりません。
不貞行為がなされた時点ですでに夫婦関係が破綻していた場合には、権利や利益の侵害がないため慰謝料を請求することはできません。
・ 時効が成立している
不倫の慰謝料請求には時効があります。不貞行為があったことおよび不倫相手を知ったときから3年を経過すると時効が成立し、不倫慰謝料の請求ができなくなります。 -
(4)不倫相手に対して慰謝料請求する際の注意点
慰謝料を請求できる条件がそろっている場合、不倫相手に対して慰謝料請求をするができますが、その際も注意するべき点があります。
① 慰謝料請求以上のことを求めるのは難しい
不倫相手に土下座をさせるなど、慰謝料請求以上のことを求めるのは法的には困難です。慰謝料請求以上のことを要求すると、不倫相手から逆に訴えられたり、犯罪行為として処罰されたりするおそれもあります。
②「不倫相手だけ」に慰謝料請求することは可能だが注意点も
不倫の慰謝料は、配偶者と不倫相手の双方に請求することもできますし、不倫相手だけに請求することもできます。
不倫が発覚しても離婚をしないのであれば、不倫相手だけに請求するケースが多いでしょう。ただし、このケースでは「求償権」に注意しなければいけません。
求償権とは、不倫をした当事者の一方が自己の責任割合を超えて慰謝料を支払った場合、他方に対して負担割合に応じた金銭を請求できる権利をいいます。
不倫相手だけに慰謝料請求をする場合、不倫相手から不倫をした配偶者に求償権が行使される可能性があります。
婚姻関係を継続する場合は、不倫相手に求償権を行使されると、実質的には家計から不倫相手への支払いが発生することになります。このような事態を避けるには、不倫相手との示談の際に求償権を放棄する旨の条項を設けておくとよいでしょう。
なお、不倫の慰謝料は不倫をした本人が支払うものであり、不倫相手の親族に対して慰謝料を請求することはできません。
3、正しい不倫慰謝料請求の方法
不倫相手に対して慰謝料請求をする手順・方法を解説します。
-
(1)証拠を集める
前述したように、不倫相手に対して慰謝料請求をするには、慰謝料を請求する側が不貞行為があったことを立証しなければなりません。不倫相手が不貞行為を認めない場合は、証拠がなければ慰謝料を請求することはできないため、事前に十分な証拠を集めておくことが大切です。
-
(2)不倫相手と直接交渉する
不貞行為の証拠を確保できたら、不倫相手と直接交渉を行います。不倫相手が不貞行為を認めているのであれば、慰謝料の金額、支払方法、支払時期などの詳細を詰めていきましょう。
話し合いで決定した事項については、書面に残しておくことをおすすめします。
不倫相手に対しては恨みや憎しみを抱くかもしれませんが、不倫相手と交渉をする際には、感情的にならず冷静に対応するようにしてください。 -
(3)応じなければ内容証明を送る
不倫相手が交渉に応じないときは、不倫相手の自宅に内容証明郵便を送付します。内容証明郵便とは、郵便局が差出人・宛先・内容・差出日を証明する郵便のことです。内容証明郵便には、支払いを強制する効力はありませんが、心理的なプレッシャーを与えて支払いを促す効果が期待できます。
不倫相手の自宅がわからない場合は、不倫相手の職場に内容証明郵便を送る方法もありますが、名誉毀損などで訴えられるリスクもあるため注意が必要です。
弁護士に依頼すれば住所が判明する可能性もあるため、まずは相談してみるのがよいでしょう。 -
(4)最終的には民事訴訟を提起
不倫相手と交渉した結果、慰謝料の支払いに応じてもらえない場合には、最終的に民事訴訟を提起することになります。
訴訟では、証拠を元に不貞行為があったことを立証していかなければなりません。弁護士のサポートがなければ手続きを進めることが難しいため、まずは弁護士に相談しましょう。
4、不倫トラブルに伴う慰謝料請求は弁護士への相談がおすすめ
不倫トラブルに伴う慰謝料請求をする際に、弁護士へ相談することで具体的にどのようなサポートを受けることができ、どのようなメリットがあるのかを説明します。
-
(1)やるべきこと、やってはいけないことが明確になる
不倫相手に対しては、慰謝料の支払いだけではなく、何らかの責任を取ってほしいと考えることもあるでしょう。しかし、誤った行為をしてしまうと、ご自身が不利な状況に追い込まれてしまうこともあります。
そのため、まずは弁護士に相談してどのような対応が可能なのかアドバイスをもらうとよいでしょう。自分の行動についてリスクをしっかりと把握することで、何をやるべきで、何をやるべきではないのか、冷静に判断することができます。 -
(2)証拠集めや慰謝料請求をサポートしてもらえる
不倫相手に慰謝料請求をするにあたっては、証拠が非常に重要です。
しかし、どのような証拠が必要になるのかについては、具体的な事案によって異なるため、一般の方では判断が難しいといえます。
弁護士に相談をすれば、どのような証拠が必要になるのか具体的にアドバイスをしてもらうことができます。また、相手の住所がわからないという場合でも、弁護士であれば弁護士会照会という調査方法を利用することできるため、特定できる可能性があります。 -
(3)交渉を任せることができる
不倫相手と交渉をしなければならないのは、精神的にも大きなストレスとなります。また、当事者だけで話し合いをするのは、お互いに感情的になる可能性が高く、新たなトラブルが生じる原因にもなりかねません。
弁護士に依頼をすれば、不倫相手との交渉をすべて任せることができ、精神的なストレスを大幅に抑えることができます。また、弁護士であれば冷静に話し合いを進めることができるため、適正な条件で示談できる可能性が高くなるでしょう。
5、まとめ
不倫が判明すると、許せないという思いから不倫相手に嫌がらせをしてしまう方もいらっしゃいます。しかし、嫌がらせの態様によっては、不倫相手から逆に訴えられたり、犯罪行為として処罰されたりするリスクもあるので注意しなければいけません。
弁護士へ相談のうえ、適切な方法で慰謝料を請求することをご検討ください。
不倫相手への慰謝料請求をお考えの方は、慰謝料問題の対応実績が豊富な、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|