離婚時の書面は念書でいい? 離婚協議書や公正証書の作成方法
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厚生労働省が公表している2022年度の「離婚に関する統計の概況」によると、離婚の種類別の割合では、協議離婚がもっとも多くなっています。また、都道府県別の協議離婚の割合では、大阪が全国で2番目に多く、91.3%となっています。
協議離婚は、離婚届を市区町村役場に提出するだけでできる簡単な方法ですが、後々トラブルが生じないように離婚時の合意をまとめた書面を作成することが重要になります。この書面の種類はいくつかありますが、「念書」という形式でもよいのか気になるところです。
今回は、離婚時の合意をまとめた書面は念書でもよいのかについて、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚協議の内容をまとめる書面の種類
協議離婚の内容をまとめる書面には、主に以下の3種類があります。
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(1)念書
念書とは、当事者が何らかの約束をした際に、その内容を文書に記載したもののうち、一方の当事者が作成する文書をいいます。
たとえば、夫が妻に支払う養育費について取り決めをした場合、夫が「私は、養育費として〇万円支払うことを約束します」という文書を作成し、妻に渡すような場合が念書になります。
このような念書は、離婚協議の内容をまとめる書面としてはおすすめできません。なぜなら、念書は、当事者の一方のみが作成するものですので、夫婦の合意内容を立証する証拠としては弱いからです。
何も作成せずに口約束だけで終わりにするよりかは、念書を作成したほうがよいですが、証拠として弱い点は理解しておきましょう。 -
(2)離婚協議書
離婚協議書とは、協議離婚が成立した際に、夫婦が合意した内容をまとめた書面です。離婚協議書は、夫婦で作成する書面です。したがって、念書のような一方の認識が記載されたものではなく、夫婦の合意内容が記載されているのが特徴です。
離婚後に離婚条件をめぐってトラブルになったとしても、離婚協議書があれば夫婦が離婚時に合意した内容を明確に立証することができますので、何かあったときの重要な証拠となります。
そのため、協議離婚をする際には、必ず離婚協議書を作成することをおすすめします。 -
(3)公正証書
公正証書とは、公証役場の公証人が作成する公文書です。
協議離婚の際には、当事者同士で作成する協議離婚書ではなく、公証人に依頼して「離婚公正証書」を作成するケースもあります。離婚公正証書とは、離婚協議書を公正証書の形式にしたものと理解しておけばよいでしょう。
協議離婚で、養育費、慰謝料、財産分与など金銭の支払いに関する取り決めをしたときは、通常の離婚協議書ではなく、離婚公正証書にしておくのがおすすめです。
なぜなら、離婚公正証書において、執行認諾文言を設けておくと、調停、審判、裁判などの裁判所の手続きを経なくても、直ちに強制執行の手続きを行うことができるからです。つまり、相手がお金の支払いを滞納した場合、いきなり相手の財産(預貯金、給料など)を差し押さえて、そこから強制的に滞納分の回収ができるようになります。
このように執行認諾文言付きの公正証書は、非常に強力な効果がありますので、金銭の支払い義務を負う相手としても、きちんと支払いを続ける動機となるでしょう。
2、離婚協議書を作成する際の注意点
離婚協議書は、どのように作成すればよいのでしょうか。以下では、離婚協議書の記載事項と作成する際の注意点を説明します。
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(1)書式
離婚協議書の書式の一例として以下をご参考ください。参考にしてみてください。
※あくまでも一般的なケースを想定した書式です。個別具体的な状況に応じてご修正ください。離婚協議書
○○○○(以下「甲」という)と○○○○(以下「乙」という)は、甲乙の離婚に関する事項について、以下のとおり合意する
第1条(離婚の合意)
甲および乙は、本日、協議離婚することに合意する。乙は、本協議成立後速やかに離婚届の提出をする。
第2条(親権)
当事者間の長男○○(令和〇年〇月〇日生、以下「丙」という)の親権者を乙と定める。
第3条(養育費)
甲は、乙に対し、丙の養育費として、令和〇年〇月から丙が20歳に達する月まで、1か月〇万円の支払い義務があることを認め、これを毎月末日限り、乙の指定する金融機関の口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第4条(面会交流)
乙は、甲が丙と月〇回程度面会交流することを認め、その具体的な日時、場所、方法等については、子の福祉に配慮して、当事者間で協議してこれを定める。
第5条(慰謝料)
甲は、乙に対し、慰謝料として金〇〇万円の支払い義務があることを認め、これを令和〇年〇月〇日限り、乙の指定する金融機関の口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第6条(財産分与)
甲は、乙に対し、財産分与として金〇〇万円の支払い義務があることを認め、これを令和〇年〇月〇日限り、乙の指定する金融機関の口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第7条(年金分割)
甲と乙との間の別紙年金分割のための情報通知書記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めることに合意し、年金分割に必要な手続きに協力することを約束する。
第8条(清算条項)
甲および乙は、本件に関し、本条項に定めるもののほか何らの債権債務のないことを確認し、今後名義の如何を問わず、互いに金銭その他一切の請求をしない。
以上の合意成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が署名・押印の上、各自1通ずつ保有する
令和〇年〇月〇日
(甲)住所
氏名 印
(乙)住所
氏名 印 -
(2)離婚協議書に記載すべき主な項目
離婚協議書に記載すべき主な項目としては、以下の8つが挙げられます。
① 離婚の合意
夫婦が離婚に合意したことを記載します。協議離婚は、市区町村役場に離婚届を提出する必要がありますので、どちらが提出するかも記載します。
② 親権
夫婦に子どもがいる場合、子どもの親権者を父と母のどちらにするかを記載します。特に指定がなければ親権を獲得した親が子どもと一緒に生活することになります。
③ 養育費
養育費に関する条項として、以下の内容を定めます。- 養育費の金額
- 養育費の支払いの始期と終期
- 養育費の支払い時期
- 養育費の支払い方法
- 支払いが滞った場合の遅延金や法的手段の設定
また、昨今のインフレを考慮し、将来的な物価変動を見越した養育費の再協議も含めておくとより安心でしょう。
一般的には、銀行振り込みの方法をとりますので、振込先の金融機関の記載も忘れないようにしましょう。
④ 面会交流
子どもとの面会交流に関する事項として、以下の内容を定めます。- 面会交流の頻度
- 面会交流の日時
- 1回あたりの面会交流の時間
- 面会交流の場所
- 連絡方法
なお、面会交流の頻度だけ定めて、詳細は当事者間で協議して定めるという内容でも問題ありません。
また、子どもの成長や再婚などによって面会交流が円滑に行われなくなる可能性もあるため、再協議や調停の申立てについても記載しておくと安心でしょう。
⑤ 慰謝料
慰謝料の支払いが生じる場合には、以下の内容を定めます。- 慰謝料の金額
- 慰謝料の支払い時期
- 慰謝料の支払い方法
- 支払いが滞った場合の遅延金や法的手段の設定
⑥ 財産分与
財産分与をする場合には、以下の内容を定めます。- 財産分与の金額
- 財産の種類別の分与方法(不動産売却、株式譲渡など)
- 財産分与の支払い時期
- 財産分与の支払い方法
⑦ 年金分割
年金分割をする場合には、年金事務所などで「年金分割のための情報通知書」を取得し、離婚協議書に年金分割の分割割合を定めます。
⑧ 清算条項
離婚協議書の最後に、清算条項を設けます。清算条項とは、離婚協議書に記載された内容以外に債権債務関係がないことを確認し、金銭その他の請求をしないことを約束する条項です。これがあることで離婚に関する問題の蒸し返しを防ぐことができます。 -
(3)内容の合意後は必ず双方で署名押印をする
離婚および離婚条件の合意ができたら離婚協議書にその内容をまとめ、最後に当事者双方が署名押印をして離婚協議書の完成となります。
必ずしも実印で押印する必要はありませんが、お互いの意思に基づいて作成したものであることを明らかにするために、氏名はワープロ書きではなく手書きで記載するようにしましょう。
3、離婚協議書を公正証書にする方法
当事者間で作成した離婚協議書を公正証書にする場合、以下のような方法で行います。
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(1)公証役場で予約する
公正証書の作成を希望する場合には、まずは最寄りの公証役場をインターネット検索するなどして探し、公証人との面談の予約をしましょう。
予約の際は、何のための公正証書か概要と目的を説明します。
公証人との面談の段階では、夫婦のどちらか一方が訪問すれば足りますが、作成時には、夫婦がそろって公証役場に出向く必要があります。 -
(2)持参するもの
離婚協議書を公正証書にする際に必要になる書類には、以下のようなものがあります。
- 戸籍謄本
- 離婚協議書
- 年金分割のための情報通知書
- 財産分与に関する資料(不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書など)
- 印鑑登録証明書と実印
- 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
事案によって必要になる書類が変わりますので、公証役場への予約の際に必要書類を確認することをおすすめします。
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(3)当日の流れ
離婚公正証書作成の当日は、夫婦そろって公証役場を訪れます。離婚公正証書は、すでに公証人によって作成済みですので、公証人の目の前で夫婦双方が内容を確認し、問題がなければ署名・押印をして離婚公正証書の完成となります。
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(4)公正証書の交付
離婚公正証書を作成する際には、公証人に支払う手数料が必要になります。公証人に支払う手数料は財産分与や養育費などの金額に応じて変動するため、はじめに確認しておきましょう。
公証人に手数料を支払ったら、公正証書の交付を受けます。
4、離婚時の交渉・書面は専門家に依頼するのがおすすめ
離婚時の交渉や書面の作成は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
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(1)記載漏れを防げる
離婚協議書に記載すべき事項にはさまざまなものがあります。事案によって記載すべき項目も変わりますので、知識や経験がなければ記載内容に漏れが生じるおそれがあります。
弁護士であれば状況に応じて必要な項目を取捨選択し、最適な内容を記載することができます。記載漏れが生じると、離婚後にトラブルが生じる原因となりますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。 -
(2)不利な条件を被りにくくなる
裁判離婚であれば裁判所が適正な離婚条件を定めてくれますが、協議離婚では、夫婦の話し合いで離婚条件を決めていかなければなりません。お互いが合意すればどのような条件にすることもできるとはいっても、相場からかけ離れた条件だと不利益を被る可能性があります。
弁護士であれば、法的観点から適正な条件を定めることができますので、不利な条件で離婚に応じてしまうリスクはありません。 -
(3)法的に有効な書式で作成できる
離婚協議書の記載内容に曖昧・不明確なものがあると、その条項が無効になり、本来の効力が得られない可能性があります。また、あまりに法外な慰謝料を定めてしまうと、公序良俗違反として無効になる可能性もあります。
このように記載内容によっては離婚協議書が無効になってしまうリスクがありますので、法的に有効な書式で離婚協議書を作成するためにも、弁護士に依頼するのが得策といえます。 -
(4)相手との交渉を任せられる
離婚協議書を作成する前提として相手との交渉が必要になります。離婚を考える状況になると夫婦関係も悪化していて、当事者だけではスムーズな話し合いが困難なケースも少なくありません。
弁護士に依頼すれば代理人として相手と交渉をするため、離婚までのストレスを最小限に抑えることができるでしょう。
お問い合わせください。
5、まとめ
協議離婚で合意がまとまったときは、念書ではなく離婚協議書を作成するようにしましょう。また、離婚条件に金銭の支払いが含まれている場合は、離婚公正証書を作成するのがおすすめです。
離婚の話し合いや離婚協議書の作成にあたっては、弁護士のサポートが有効です。離婚をお考えの方は、まずはベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスまでお気軽にご相談ください。
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