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重婚罪とは? どのような場合に重婚罪が成立する? 弁護士が解説

2022年08月01日
  • その他
  • 重婚罪
重婚罪とは? どのような場合に重婚罪が成立する? 弁護士が解説

婚姻に関するルールは民法に規定があり、夫婦には次のような義務があると規定されています。

・ 夫婦は同居し、互いに扶助しなければならない(民法752条)
・ 不貞な行為をしてはならない(離婚事由:民法770条1項1号)

これらの義務に違反すると、配偶者から離婚調停や訴訟を起こされて離婚される可能性はありますが、罪に問われるということはありません。

一方、民法732条では「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。」と規定されています。さらに刑法には重婚罪という規定があり、既婚者が重ねて婚姻した場合は処罰されることがあるのです。

婚姻に関するルールの中で、なぜ重婚だけが罪に問われるのでしょうか。本コラムでは刑法の重婚罪についてベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。

1、重婚罪の要件と重婚が処罰される理由

重婚罪の規定は次のとおりです。
「配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。」(刑法184条)
重婚罪が成立する要件や重婚が処罰される理由について解説します。

  1. (1)重婚罪の要件

    どのような場合に重婚罪が成立するのか、条文の文言に沿って解説します。

    ① 配偶者のある者
    法律上の婚姻関係にあることが必要です
    法律上の婚姻関係は、結婚する意思がある2人が、戸籍法上の届け出をして受理されることにより成立します。
    つまり、市区町村役場に婚姻届を出して結婚している人が重婚罪の主体となります。

    ② 重ねて婚姻をした
    こちらも法律上の婚姻を意味します。
    つまり市区町村役場に婚姻届を出して受理されることで、重婚罪が成立することになります。
    重婚罪の未遂を処罰する規定はないため、単に結婚の約束をしたとか、役場に婚姻届を出したけれども受理されなかった場合は罪にはなりません

    ③ 相手方となって婚姻をした者
    既婚者と婚姻した人も重婚罪のもう一方の主体となります
    ただし、相手に配偶者がいることを知らなかった場合は、故意がないため処罰されません。
  2. (2)重婚が処罰されるのはなぜ?

    明治維新以降、西欧に倣った法整備が進められ、明治15年には次のような重婚罪の規定(旧刑法354条)が新設されました。

    「配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ爲シタル時ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス」


    明治初期までは跡取りの確保のために妻以外の妾との間にも子どもをもうける慣習があり、慣習を改めて一夫一妻制を徹底する趣旨であったといわれています
    旧刑法と現行刑法の重婚罪の規定を見比べると、刑の重さもほぼそのまま存続しているのが分かります。

    もっとも、重婚罪は婚姻制度の根幹をなす一夫一妻制を維持するための規定であり、夫婦関係を保護するものではありません
    円満な夫婦関係を破壊する不倫などの行為は、民事上の慰謝料請求などにより解決すべきこととなります

2、重婚罪はどのような場合に適用される?

重婚罪は既婚者が重ねて婚姻届を提出して受理されることにより成立します。
しかし、既婚者が婚姻届を提出しても、審査の段階で戸籍に配偶者の記載があることが判明すれば受理されることはありません。

警察庁の統計によれば、重婚罪の検挙件数(淫行勧誘罪を含む)は、令和2年では年間1件であり、適用例はほとんどないのが実情です。(出典:警察庁ホームページ「令和2年の犯罪」より)
では、どのような場合に重婚罪が適用されるのか、実例を交えてご紹介します。

  1. (1)再婚後に協議離婚が無効とされた事例

    妻に無断で協議離婚届を偽造し戸籍上婚姻関係を解消し、別の女性と婚姻したという事例で重婚罪の成立が認められたものがあります。

    この裁判では、弁護人から次のような主張がされました。

    • 重婚罪が成立するためには、前婚と後婚が同時に戸籍に記載されることを要件とするが、本件は離婚により前婚の記載が抹消されているため、重婚罪は成立しない。


    これに対し、裁判所は次のように判断しています。

    • 前婚と後婚が同時に戸籍に記載されることは実務上ほとんど起き得ないことであり、重婚(既遂)罪が成立する余地がなくなるため、採用できない。
    • 前婚の婚姻関係が適法に解消されないうちに他の婚姻関係を成立させた場合は、重婚罪が成立というべきである。


    なお、この事例は、愛人と婚姻するために協議離婚届を偽造するという手口が用いられていますが、これは相続でも悪用される手口です。
    配偶者には手厚い相続分が認められていますが、離婚してしまえば相続権を失うことから、知らないうちに偽造した協議離婚届が提出されるというものです。

    そこで、平成20年5月からは、婚姻や養子縁組、子どもの認知に関する届け出をする場合は役場窓口での本人確認が義務付けられ、確認できない場合は役場から本人へ通知されることになっています。

  2. (2)失踪宣告後の再婚が重婚となる可能性も

    失踪宣告とは、

    • 行方不明となって7年以上生死不明である場合
    • 海難事故や災害などにより1年以上生死不明である場合

    に、家庭裁判所の認定により失踪者が死亡したものとみなす制度です(民法30条)。
    失踪宣告が確定すると、失踪者は法律上死亡したものとみなされ(民法31条)、婚姻関係も消滅します。

    なお、失踪宣告後に失踪者の生存が確認された場合は宣告が取り消され、婚姻関係も復活するのが原則です。
    しかし、失踪宣告後に失踪者の配偶者が再婚し、その後、失踪者が見つかって、宣告が取り消された場合はどなるのでしょうか。

    失踪宣告取り消しの効果は、失踪者が生存していることを知らずにした行為の効力に影響を及ぼさないこととされています(民法32条1項後段)。
    この規定は、失踪者の財産の処分に関するものですが、婚姻関係でも同様に再婚の効力に影響を及ぼさないと理解されています。
    ただし、再婚の当事者の一方でも失踪者の生存を知っていた場合は失踪前の婚姻関係が復活し、重婚罪に問われる可能性があります。

3、内縁関係にも重婚罪は適用される?

カップルの形態には、法律婚のほかにも内縁や同居、愛人など多様な関係があります。
この中で内縁関係は婚姻に準じるものとして法的に保護されることもあります。
内縁関係とはどういうものか、内縁の場合も重婚の問題が生じるのかについて解説します。

  1. (1)内縁関係とはどのような関係?

    内縁関係とは、共同生活の実態やカップルの意識は夫婦と変わらないものの、婚姻届を提出していない関係をいいます。法律婚と対比して事実婚ということもあります。
    婚姻関係は婚姻届の提出により成立しますが、内縁関係はある程度の期間夫婦同様の共同生活を営み既成事実化しなければ、法的に内縁関係とは評価されません
    内縁関係が認められると、法律婚と同様に同居や扶助の権利、義務、不貞行為や不当な内縁関係の破棄に対する慰謝料請求権などが認められるようになります

    また、内縁関係を解消する場合は財産分与や子どもの養育費の問題が生じることもあります。

  2. (2)既婚者が内縁関係を結ぶと重婚になる?

    婚姻関係にある人が別の人と内縁関係を結ぶことを重婚的内縁関係といいます。

    内縁関係は、夫婦に関する民法の規定を当てはめて法的保護が図られるものですが、一方で民法は重婚を禁止しています。

    しかし、婚姻関係が形骸化して事実上離婚の状態にある場合には、重婚的内縁関係についても、内縁関係と同様の法的保護が認められるケースもあります
    配偶者暴力などにより協議離婚届の提出が難しいケースもあるため、個別の事情により、現実に成立している内縁関係が尊重されることもあるということです。

  3. (3)内縁関係で重婚罪の問題が生じることはある?

    刑法の重婚罪は、重複して法律婚の関係を持つことが問題になります

    内縁関係にありながら婚姻したり、婚姻関係にある人が内縁関係を結んだりしても重婚罪が成立することはありません

4、外国で婚姻した場合は重婚罪が成立するケースがある

日本国内で婚姻する場合は、戸籍によるチェックが可能なため重婚が成立するのは極めてまれですが、外国で婚姻する場合はどうでしょうか。
国際結婚のしくみや外国での婚姻により重婚になるケースについて解説します。

  1. (1)国際結婚のしくみ

    国際結婚の方式は、法の適用に関する通則法24条により次のように規定されています。

    「婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による」
    「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による」


    つまり、婚姻の要件はその人の本国の法律が適用され、婚姻の方式は挙行する国の法律が適用されるということです。
    たとえば、日本人とアメリカ人がアメリカで結婚する場合、現地の州で規定する方式で婚姻を成立させます(神父や判事の面前での結婚式が一般的)。

    婚姻に関する要件はそれぞれの本国法が適用されます

    ただし、例外的に重婚や近親婚、再婚禁止期間の要件は双方的要件とされており、両名が双方の本国法に適合していなければ婚姻できません。

    つまり、カップルの一方の国では重婚が許容されていたとしても、もう一方の国で禁止されている場合、重婚に当たる婚姻は認められないということです。

    そのため、外国で婚姻する場合は本国が発行する「婚姻要件具備証明書」がなければ婚姻できないのが一般的です。

    なお、外国籍の方が日本人と日本国内で婚姻する場合は、市区町村役場に婚姻届を提出して婚姻を成立させますが、外国籍の方の本国が発行する婚姻要件具備証明書も必要になります。

  2. (2)外国での婚姻により重婚になるケース

    日本国内で婚姻する場合は、日本方式(婚姻届の提出)により婚姻を成立させることになるので、重婚はほとんど不可能といえます。

    しかし、外国において外国方式で婚姻した場合、現地の法律により法的に婚姻は成立するものの、戸籍には直ちに連動しない状態となります。

    この点、日本人が外国方式で婚姻した場合は、現地の国が発行する婚姻証明書を在外公館や本籍地の役場に提出して戸籍上の届け出をしなければなりません
    この届け出をしないまま別の人と婚姻した場合、婚姻届が受理されて法律婚が二重に成立することがあります。
    日本人カップルが外国で婚姻する場合も外国方式で婚姻することが可能なため、同様の問題が生じえます。

5、まとめ

本コラムでは刑法の重婚罪について解説しました。

日本では婚姻届の提出と戸籍への記載が連動するため、重婚が成立することはほとんどありません。
しかし、

  • 前婚の離婚が無効となって、再婚が重婚になる
  • 外国方式での婚姻により戸籍に記載されないまま別の婚姻届が受理される

ケースで重婚罪が成立する可能性はあります。

近年は「夫婦別姓」や「同性婚」など婚姻制度に関わる話題が注目を集めており、重婚はやや時代に取り残された感もある制度といえるでしょう

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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