離婚時の親権の決め方にルールはある? 子どものために知りたいこと
- 親権
- 離婚
- 親権
- 決め方
東大阪市が公開している「令和4年度 統計書」によると、令和3年には812件の離婚が成立しています。
子どもがいる夫婦が離婚をするときに揉めることで多いのが「親権」についてです。夫婦がお互い親権を譲らず話し合いが決裂し、調停や訴訟に発展することもあります。「親権争い」になると母親に有利なイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
そもそも親権とはどのような権利のことをいうのか、親権者の決定において考慮されることなどをベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。
1、子どもの親権
「親権」とは未成年の子どもの利益を守るために、財産管理や監護・教育をする権利であり義務のことです。親権には大きく分けて「財産管理権」と「身上監護権」という2つの権利義務が含まれています。
婚姻中は夫婦共に親権を持ちますが、現行法上、離婚をする場合はどちらかを親権者に定めなければなりません。なお、民法改正により、令和8年5月24日までに共同親権制度が開始する予定になっています。
原則、親権者は2つの権利義務どちらも持ちますが、「身上監護権」については親権者と分けることも可能です。その場合、身上監護権を持つ親を「監護権者」といいます。
2つの権利義務の内容について詳しくみていきましょう。
-
(1)財産管理権
「財産管理権」は、未成年の子どもの財産を管理し、子どもの法律行為に同意したり法律行為を代理したりする権利義務です。
未成年者は法律上、親権者の同意を得なければ契約などの法律行為はできません。物事に対する判断能力が未熟だと考えられている未成年者を守るための規定です。
そのため、親権者は子どもの法律行為に対する同意権や代理権を持ちます。
この権利があることで、たとえば子どもが親権者の同意を得ず高額な商品を購入してしまったような場合に、その売買契約を取り消すことができます。 -
(2)身上監護権
「身上監護権」は、未成年の子どもを心身共に健全に成長させるために監護や教育する権利義務のことをいいます。前述のとおり、「身上監護権」については親権者と分けることも可能で、その場合は監護権者がこの権利義務を行使します。
身上監護権に含まれている、4つの権利義務についてみていきましょう。- ① 子の人格の尊重等(民法821条)
令和4年12月の民法改正までは、子どもをしつける権利として「懲戒権」が規定されていました。しかし民法改正によってこの規定が削除されたことで、「子の人格の尊重等」という義務が新しく規定されました。
これにより、親権者は子どもの人格を尊重するとともに、その年齢と発達の程度に配慮しなければならず、かつ体罰や子どもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはいけない義務を負っています。 - ② 居所指定権(民法822条)
「居所指定権」は、子どもが住む所を指定できる権利義務のことです。この権利により、親権者は子どもと一緒に暮らすことができます。 - ③ 職業許可権(民法823条)
子どもが就職することを許可する権利義務のことです。
この権利があると、たとえば許可をした後に「やっぱりこの仕事は子どもには堪えられない」などと判断した場合に、許可を取り消したり仕事を制限したりすることができます。 - ④ 身分行為の代理権(民法775条・787条・804条)
子どもの身分に関わる法律行為を「身分行為」といいますが、これを子どもが単独で行うことはできません。子どもが身分行為をする場合、親権者が同意・代理する権利義務があります。たとえば、養子縁組や認知などがあげられます。
- ① 子の人格の尊重等(民法821条)
2、親権者を決めるにあたって考慮されること|子どもの年齢との関係性
親権について夫婦間協議で決まらない場合、後述する「調停」や「裁判」で争うことになります。「調停」や「裁判」での判断基準や子どもの年齢との関係性について詳しくみていきましょう。
-
(1)母性優先の原則
「母性優先の原則」は、子どもが乳幼児の場合、親権者には母性を発揮できる母親が優先されるという原則です。あくまでも「優先される」だけで、必ずしも母親に親権が渡るとは限りません。
たとえば、母親がネグレクト(育児放棄や育児怠慢)をしていて、父親の方が積極的に育児を行っていたようなケースでは、母親ではなく父親に親権が渡る可能性があります。 -
(2)兄弟不分離の原則
「兄弟不分離の原則」は、子どもが2人以上いる場合、兄弟は分離せず同一親権者の下で養育する方が望ましいという原則です。
-
(3)監護・養育の実績(継続性の原則)
裁判所は子どもの生活環境の安定性と継続性を重視します。そのため、監護・養育をそれまで主に行ってきた親に親権が認められる可能性が高いです。
-
(4)子どもの意思の尊重
「どちらの親と暮らすか」という選択において、子どもの意思は尊重されるべきでしょう。しかし、まだ小さく、意思表示ができない場合や判断能力に欠ける場合は、子どもの意思を尊重することは難しくなります。
では何歳から子どもの意思が尊重されるのでしょうか?
裁判所において子どもの意思が尊重される年齢は「15歳」からです。ただし、10歳前後の場合であっても、判断能力があると判断されると意思を尊重してもらえる傾向にあります。
このように、親権者を決める際に考慮されることはいくつかありますが、もっとも重視されるのは「子の福祉」、つまり子どもにとってどちらが親権者になる方が幸せかという観点です。
また、裁判所はケースに応じて総合的な判断を下すため、これらの判断基準は絶対的な基準ではないことに注意しましょう。
3、親権を決める手続き
親権を決める手続きの流れを解説します。
-
(1)夫婦間協議
まず、夫婦間協議、つまり話し合いによって親権を決めます。当事者同士の話し合いで合意に至ると「協議離婚」が成立します。
話し合いが決裂した場合は、「離婚調停」の手続きへ進みます。 -
(2)離婚調停
夫婦間協議が決裂した場合に行う手続きが、家庭裁判所に対する「離婚調停」の申し立てです。
調停とは、裁判官や調停委員といった第三者を交えて話し合うことで、紛争を解決する制度のことをさします。調停委員からのアドバイスを受けることができるので、合理的に話し合いを進めることができます。また、調停では、基本的には相手と顔を合わせず進めることが可能です。
離婚調停でも親権争いが起きている場合は、家庭裁判所の調査官によって「どちらの親が親権者にふさわしいか」という「調査官調査」が実施されることがあります。
具体的な調査内容は、次のとおりです。- 子どもとの面談
- 家庭訪問
- 幼稚園や保育園、学校等の訪問
- 家庭裁判所の面接室での様子観察
調査結果は原則書面で裁判所に報告され、それをもとに話し合いをしていくことになります。
離婚調停で合意に至ると「調停離婚」が成立しますが、合意に至らない場合は「審判」か「訴訟」に移行することになります。
「審判」は、たとえば離婚についてはおおむね合意に至ったものの、親権者のみが決まらずに離婚が合意に至らないような場合など、合意に至らなかった点のみ裁判所の判断に委ねます。
審判に不服がある場合は申し立てができることもできますが、そもそも調停不成立の場合に審判を行うことは少なく、「離婚訴訟」に移行するのが通常です。 -
(3)離婚訴訟
「離婚訴訟」では、当事者の主張や調査官調査の結果、提出された資料などをもとに、離婚の可否、親権など離婚における詳細な条件について裁判官が判断を下します。当事者は、確定した判決に従わなければなりません。
なお、家事事件手続法により「調停前置主義」がとられるため、調停を飛ばして離婚訴訟を提起することはできません。
離婚訴訟はあくまでも最終手段です。訴訟で争うと時間も費用もかかるため、可能であれば協議や調停において解決することが望ましいでしょう。
4、親権や離婚についての相談は弁護士へ
親権や離婚について弁護士に相談すると、夫婦間協議で親権を獲得するための交渉や、離婚条件が自分に不利にならないためのアドバイスを受けたり、交渉を任せたりすることができます。
協議が決裂した場合は調停や訴訟に進むことになりますが、弁護士に依頼をすれば裁判所の判断基準を踏まえた証拠収集や主張へのアドバイスを受けられるだけでなく、その手続きのやり取りも、すべて任せることが可能です。
離婚の際には親権だけではなく、財産分与や面会交流、年金分割、養育費など決めなければならない事項が多くあります。不利な条件で合意をすることを防ぐためにも、まずは弁護士に相談することがおすすめです。
5、まとめ
親権は、未成年の子どもの利益を守るためにも大切な権利義務です。親権争いになると「母性優先の原則」から母親に親権が渡るケースが多いですが、決して父親が親権を獲得できないわけではなく、あくまでも、子どもの福祉が優先されることになります。
親権問題は、こじれてしまうと解決までに時間を有してしまうケースが少なくありません。
夫婦間での話し合いの時点から弁護士にご相談いただければ、代理人として協議を進めることが可能です。状況に応じた適切なアドバイスを受けることができるほか、協議の段階から相手と直接話す必要がなくなります。また、調停や裁判に進んだ際に親権獲得を有利に進めていくための準備もしっかりと行えるので、精神的にも落ち着いて離婚協議を進めることができるでしょう。
離婚と親権問題を抱えている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています