離婚調停にはどのくらいの期間がかかるの? 長引かせないポイントは?

2022年07月25日
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離婚調停にはどのくらいの期間がかかるの? 長引かせないポイントは?

夫婦が離婚をしようとする場合、さまざまな事項を取り決めなければなりません。

協議離婚が難しければ離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))へと移行しますが、夫婦間の主張内容に大きな差があるケースでは、調停期日が何度も繰り返され、離婚調停が長期化することも予想されます。

離婚調停を長引かせないためには、夫婦間で揉めているポイントを整理したうえで、法的な観点から冷静・建設的に協議を行うことが大切です。

今回は離婚調停にかかる期間や、離婚調停が長引く理由の具体例などについて、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。

1、司法統計に見る、離婚調停にかかる期間

夫婦間の離婚協議がまとまらずに離婚調停へと発展した場合、調停成立または不成立となるまでに数か月、長ければ1年以上を要することが想定されます。

まずは、2020年の司法統計のデータを基に、離婚調停はどのくらいの期間を要するのかを見てみましょう。
(出典:「令和2年司法統計年報 家事 第16表 婚姻関係事件数 終局区分別審理期間および実施期日回数別 全家庭裁判所」(裁判所))

  1. (1)3か月~1年かかるケースが6割以上

    2020年度の司法統計によると、同年中に終結した婚姻関係に関する5万8969件の調停事件について、審理期間は以下のとおり分布しています。

    審理期間件数
    1か月以内3075件
    1か月超3か月以内1万1687件
    3か月超6か月以内1万7793件
    6か月超1年以内1万9118件
    1年超2年以内6845件
    2年超451件


    上記のデータを見ると、婚姻関係に関する調停事件にかかる期間としては、「6か月超1年以内」がもっとも多く1万9118件、次いで「3か月超6か月以内」が1万7793件となっています。

    そのため、離婚調停にかかる標準的な期間としては、「3か月超1年以内」を想定しておくべきでしょう
    婚姻関係に関する調停事件の全体総数(5万8969件)に対しては、「3か月超1年以内」で終結した事件が計3万6911件、約62.6%を占めています。

  2. (2)1年より長くかかるケースも1割以上ある

    終結までに「1年超2年以内」を要した事件が6845件、「2年超」を要した事件が451件あることも注目すべきでしょう。
    「1年超」と、まとめた場合は計7296件で、婚姻関係に関する調停事件の全体総数(5万8969件)に対して約12.4%を占めています。

    複数の離婚条件について揉めているケースなどについて、離婚調停における調整がなかなかうまくいかずに長期化したことが推測されます。
    夫婦間の離婚協議が複雑にこじれている場合には、1年以上離婚調停が続くことも視野に対応しなければなりません

2、離婚調停が長引くポイント①|相手が離婚に反対している

相手が離婚に反対している場合、離婚調停は長引くことが予想されます。
法定離婚事由(民法第770条第1項各号)が存在し、かつ相手の説得が難しいようであれば、早めに離婚訴訟へと移行することも1つの選択肢でしょう。

相手が離婚に反対する理由としては、主に以下のパターンが考えられます。

  1. (1)配偶者や子どもに対する未練がある

    ご自身は相手に対して愛想を尽かしていても、相手はまだ家族と離れたくないという未練を断ち切れずにいるのかもしれません。
    特に子どもがいて、相手が親権を失う可能性が高い場合には、子どもと離れるのが嫌だという理由で離婚を拒否するケースもよく見られます。

    家族への未練から離婚を拒否する相手に対しては、関係修復の可能性がないことをきっぱりと伝えて、お互い新しい生活へと踏み出すことが賢明だと根気強く説得するのがよいでしょう。

  2. (2)離婚後に収入を確保する見込みが立っていない

    相手が専業主婦(主夫)の場合や、パートタイムで働いていて収入が低い場合などには、離婚後の収入に対する不安から、相手が離婚を拒否するケースがあります。
    たしかに、離婚後に仕事のキャリアを築き直すのは難しい可能性もあるかもしれません。

    金銭的な不安を訴えて離婚を拒否する相手に対しては、離婚時に十分な金銭的メリットを提供するのが有効です。
    たとえば財産分与として多めの金額を提案するなど、離婚後の生活に関する相手の不安を取り除くことが、早期に離婚を成立させることにつながるでしょう。

3、離婚調停が長引くポイント②|お金の問題で揉めている

離婚自体にはお互い同意しているとしても、お金に関する問題で揉めている場合には、離婚調停が長期化する可能性が高いです。

離婚調停において揉めやすいお金の問題には、主に財産分与と慰謝料があります

  1. (1)財産分与の金額に争いがある

    夫婦が離婚をする場合、婚姻中に取得した財産等を公平に分ける「財産分与」を行います(民法第768条第1項)。

    夫婦共有名義の財産だけでなく、どちらかの単独名義であっても、婚姻中に取得したものであれば、原則として財産分与の対象となります。
    したがって、財産分与を正しく行うためには、お互いが婚姻中に取得した財産を正直に開示し合うことが必要です。

    しかし、相手が財産分与の対象となる財産を、きちんと開示しているのかどうかは、調査を尽くしたとしても100%把握することは困難です。
    「相手が財産を隠しているのではないか」という疑念が生じた状態では、財産分与に関する話し合いがスムーズに進められない可能性があります

  2. (2)慰謝料について争いがある

    離婚慰謝料の支払いを行うかどうか、支払うとして金額はどのくらいかという点も、離婚調停で揉めやすいポイントの1つです。

    離婚慰謝料は常に発生するわけではなく、不法行為(民法第709条)や権利または法的利益の侵害に基づく損害(民法第710条)が認められる場合に発生します
    たとえば、不倫(不貞行為)は不法行為に当たりますが、不倫の事実があったかどうかで揉めている場合には、当然慰謝料を支払うかどうかについても意見が食い違うことになるでしょう。

    また、慰謝料は精神的損害を金銭的に評価したものですが、精神的損害は目に見えないため、金額についても見解の相違が生じがちです
    お互いの主張する慰謝料の金額に大きな差がある場合には、離婚調停の長期化は免れません。

4、離婚調停が長引くポイント③|子どもの問題で揉めている

子どもがいる場合には、親権・養育費・面会交流の方法などに関して揉めてしまい、離婚調停が長期化する例もよくあります。

  1. (1)どちらも親権を欲しがっている

    お互いが子どもの親権を欲しがっている場合には、親権者の決定に関して激しい争いが予想されるため、離婚調停が長期化する可能性が高いでしょう。

    親権に関する言い争いは、なかなか決着がつかず、当事者同士では到底解決できないケースが多いです。
    そのため、早い段階で家庭裁判所の審判などによる結論を求めたほうが賢明でしょう

  2. (2)養育費(特に特別費用)について争いがある

    離婚後に子どもと同居しない親(非親権者)は、同居する親(親権者)に対して養育費を支払う義務を負います。
    離婚後も親は子に対する扶養義務を負っており(民法第877条第1項)、非親権者は養育費の支払いという形で扶養義務を果たす必要があるからです。

    毎月支払う養育費の金額は、裁判所が公表している養育費算定表に従って決められるのが一般的です。

    ただし、養育費算定表によって計算される金額には、私立学校の入学金、授業料や病気やケガの治療費など、算定表には含まれていない費用が存在します。

    これらの費用は「特別費用」として、離婚時に精算ルールを決めておくことが多いです。
    しかし、非同居親が特別費用をどこまで負担するかについては見解の相違が生じやすく、離婚調停を長期化させる原因になる場合があります。

    もし養育費の支払いについて、夫婦の見解があまりにもかけ離れている場合には、早期に家庭裁判所の審判を求めることも有力な選択肢です。

  3. (3)面会交流の方法について意見の食い違いがある

    婚姻中にDVやモラハラを受けたなど、非同居親の人格や行動に対して同居親が不信感を持っている場合、同居親は非同居親と子どもの面会交流を拒否することがあります。
    この場合、非同居親が子どもと会えなくなることに反発して、離婚調停が長期化する可能性が高くなります。

    面会交流の方法は、子どもの利益をもっとも優先して考慮したうえで決めるべきものです(民法第766条第1項)。
    離婚調停の中では、自分の感情ばかりを優先するのではなく、子どものためにどのような形の面会交流が一番よいのかを、調停委員の意見も参考にしながら話し合うべきでしょう。
    どうしても結論が出ない場合には、家庭裁判所の審判を求めることも考えられます。

5、まとめ

今回のコラムでは、離婚調停にかかる期間や長引いてしまう理由をご説明いたしました。

離婚調停の標準的な期間は、3か月から1年程度です。
相手が離婚そのものに反対している場合や、お金・子どものことで揉めている場合には、離婚調停が長期化することも考えられます。

調停離婚の見込みが立たない場合には、早期に離婚裁判(離婚訴訟)への意向も視野に入れるべきでしょう。
また、離婚そのものについては互いに同意しているものの、離婚条件について揉めている場合には、家庭裁判所の審判を求めることも考えられます。
弁護士に依頼することで、早期に離婚が成立する可能性が高くなりますので、なるべく早く解決したい方は、まずは相談することを検討してみてはいかがでしょうか。

ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスでは、離婚に関するご相談を随時受け付けております。

適正な条件で早期に離婚を成立させられるように、弁護士が中心となって尽力いたします。
弁護士費用についても、ご依頼前に明確にご説明いたしますので、安心してご依頼いただけます。

配偶者との離婚をご検討中の方は、お早めにベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスへご相談ください。

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