「犬を飼えない」ことを理由に離婚することはできる?

2023年12月14日
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「犬を飼えない」ことを理由に離婚することはできる?

犬を飼っている方は、家族同然の存在として犬をかわいがっていることかと思います。

しかし、結婚した配偶者が犬嫌いであり、犬を飼い続けることに反対されるという場合があります。また、結婚後に犬を飼おうとしたところ、配偶者から反対される、ということもあるでしょう。このような事態が起こった場合には、価値観の相違から離婚を考えることもあると思われます。

本コラムでは、犬を飼えないことを理由として離婚ができるかどうかについて、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。

1、結婚したために犬が飼えなくなる場合

結婚したために犬が飼えなくなる場合の典型例としては、以下の二つのパターンが考えられます。

  1. (1)犬を飼おうとしたが配偶者に反対されている

    犬が好きな方であっても、独身中は家を留守にすることが多く、また賃貸物件だとペットの飼育が禁止されているなどの理由から、犬を飼うことを諦めている場合があります。
    しかし、結婚したら犬の面倒をみる家族が増えたりペット可の物件に引っ越したりすることができることから、「結婚すれば念願の犬を飼うことができる」と楽しみにしている方もいるでしょう。

    ところが、いざ結婚したら配偶者から犬を飼うことに反対されたという場合には、そのような夢をかなえることはできません。
    配偶者の反対を押し切って犬を飼ったとしても、配偶者との関係性が悪化したり犬にも悪影響が及んだりすることを懸念して、しぶしぶ犬を飼うことを諦めてしまう方もいると考えられます。

  2. (2)すでに飼育している犬を飼うことを止めるよう配偶者に迫られている

    独身時代に犬を飼った方は、家族同然の存在として犬をかわいがっていることでしょう。
    そのため、結婚したら当然に犬も一緒に暮らすものだと考えていたところ、配偶者から「犬を飼うのをやめてほしい」と迫られてしまう場合もあります。

    配偶者との間で折り合いが付かない場合には、実家に犬を預けるなどの対応をとらざるを得ず、結婚生活で犬を飼うことができなくなってしまうこともあり得ます

2、離婚する方法

配偶者と離婚する方法は、主に以下の三種類です。

  1. (1)協議離婚

    協議離婚とは、夫婦の話し合いにより離婚をする方法です。
    夫婦がお互いに話し合いをして離婚する方法であるため、互いの合意があればどのような理由であっても離婚することができます。

    犬を飼えないことを理由に離婚をしたいのであれば、犬を飼えないことがどれだけショックであったのかを配偶者に伝えて、離婚以外に選択肢がないことを理解してもらうことが大切です
    配偶者と離婚の合意ができたら、離婚届に記入して、市区町村役場に提出すれば離婚は成立となります。
    離婚条件(慰謝料、財産分与、養育費など)の取り決めをしたときには、その内容を離婚協議書などの書面に残しておくようにしましょう。

  2. (2)調停離婚

    調停離婚とは、家庭裁判所において夫婦間の問題について話し合いを行い、離婚をする方法です。

    調停離婚は、協議離婚と同様に基本的には話し合いの手続きになりますので、夫婦双方の合意がなければ離婚は成立しません。
    しかし、調停委員という第三者が間に入ってくれることから、夫婦だけで話し合う場合よりも冷静に対応できるため、協議離婚に比べて離婚がまとまる可能性が高くなります。

  3. (3)裁判離婚

    協議離婚および調停離婚で離婚が成立しないときは、最終的には裁判所に離婚訴訟を提起する必要があります。
    このように裁判手続きにより離婚を目指す方法を「裁判離婚」といいます。

    裁判離婚は、話し合いの手続きではないため、裁判所に離婚を認めてもらうためには、後述するような法定離婚事由が必要になります。
    このような法定離婚事由がなければ、裁判で離婚を認めてもらうことはできません

3、「犬を飼えない」ことは離婚事由になるか?

以下では、「犬を飼えない」ということが裁判で離婚を認めてもらうための法定離婚事由になるか否かについて解説します。

  1. (1)法定離婚事由とは

    民法では、以下の五つの事由が法定離婚事由として規定されています。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 回復見込みのない強度の精神病
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    裁判離婚では、これらの法定離婚事由に該当する事情があることを主張する必要があります。

  2. (2)犬を飼えないことを理由に離婚はできる?

    「犬を飼えない」というだけでは、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しません。
    しかし、犬の飼育に関連して、配偶者からDVやモラハラを受けているような場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
    また、すでに飼育している犬を飼うことを止めるように言われたため、別居をしているという場合には、別居期間が長期間に及ぶなら、その他の事情と合わせて「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断される可能性もあります。

    単に「犬を飼えないから離婚したい」という理由だけでなく、犬を飼えないことにより夫婦関係にどのような影響が生じているのかを具体的に主張していくことが重要になるのです

4、離婚できた後の犬の扱い

以下では、離婚が成立した場合に、飼っている犬はどのように扱われるかについて解説します。

  1. (1)犬は財産分与の対象になる

    「犬などの動物は大切な家族であるため、離婚の際には、子どもと同様に親権者を決めなければならない」と考えている方もおられると思います。
    しかし、法律上、犬は「人」ではなく「物」として扱われますので、犬について親権というものは存在しません。

    夫婦が婚姻期間中に購入した犬については、夫婦の共有財産に含まれるため、財産分与の対象となります。
    そのため、犬をどちらが引き取るのかについては、財産分与の話し合いの中で解決を図る必要があります。

    なお、独身中に飼っていた犬については、特有財産として財産分与の対象外になります
    婚姻前の飼い主に所有権がありますので、婚姻前の飼い主が犬を引き取ることになるのです。

  2. (2)どちらが犬を引き取るのかの判断基準

    犬が夫婦の共有財産に含まれる場合には、どちらが犬を引き取るのかを決める必要があります。
    その際には、一般的には以下のような事情を考慮して判断することになります。

    ① どちらになついているか
    犬がどちらになついているかは、引き取る人を決める際の重要なポイントになります
    犬がなついていない人が犬を引き取ったとしても、飼育放棄などのリスクが高くなりますので、犬がなついている人の方が有利になるのです。

    ② 主にどちらが飼育していたか
    過去の犬に対する飼育実績は、犬への愛情のあらわれといえますので、主に犬を飼育していた方が有利になります
    また、通常は主に飼育していた人の方に対して犬もなつくものであるため、その点でも有利になるといえます。

    ③ 離婚後の飼育環境や経済力
    離婚後に犬を引き取ろうとしても、ペット飼育禁止物件に引っ越すような場合には、現実的に犬を引き取ることはできません。
    また、犬には養育費の支払いはありませんので、離婚後に餌代や病院代などの飼育費用を支払うだけの経済力があるかどうかも重要な判断要素となります

5、離婚の問題は弁護士に相談

離婚問題でお困りの方は、弁護士に相談することを検討してください。

  1. (1)犬を飼えないことによる離婚の可否を判断してもらえる

    「犬を飼えない」という理由は、法定離婚事由には該当しませんので、それだけでは裁判で離婚をすることができません。
    裁判離婚を視野にいれている場合には、犬の飼育に関連した事情で、法定離婚事由に該当するものがあるかどうかが重要になります

    法定離婚事由の該当性については、専門家である弁護士でなければ正確に判断することが難しい事柄です。
    協議離婚・調停離婚で離婚を目指すのか、裁判離婚で離婚を目指すのかは、法定離婚事由の有無によって変わってきますので、今後の方針を明確にするためにもまずは弁護士に相談するとよいでしょう。

  2. (2)相手との交渉を任せることができる

    離婚を決断したときは、まずは相手との話し合いが必要になります。
    しかし、離婚の話し合いは、険悪なムードになることも多く、非常にストレスがかかってしまいます。
    精神的な負担を少しでも軽減するためにも、離婚の交渉は弁護士に任せることをおすすめします

    弁護士であれば、依頼者に代わって相手との交渉を担当することができます。
    代理人である弁護士が対応することで、相手も冷静になりやすく、スムーズに離婚の話し合いを進められる可能性が高くなるのです。

  3. (3)有利な条件で離婚できる可能性が高くなる

    離婚時には、慰謝料、財産分与、親権、養育費、面会交流などの離婚条件の取り決めが必要になります。
    犬が夫婦共有財産に含まれる場合には、どちらが犬を引き取るのかも決めなければなりません。
    このような離婚条件の取り決めにあたっては、金額の相場や決め方のルールなどがあるため、それらを踏まえて交渉を行っていくことが大切です。

    法理や交渉の専門家である弁護士に依頼すれば、ご自身で対応するよりも有利な条件で離婚できる可能性が高くなります

6、まとめ

「結婚後に犬を飼うのを反対された」、「すでに飼っていた犬の飼育を止めるように言われた」などの事情は、離婚を考えるきっかけのひとつになります。
お互いに合意の上で離婚することができればよいですが、相手が離婚に反対している場合には、法定離婚事由がなければ離婚することができません。
ご自身のケースが、裁判離婚の可能なケースであるかを判断するためにも、離婚を検討されている場合にはまずは弁護士に相談することをおすすめします。

ペットの飼育が原因で離婚を検討されている方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています