即日解雇は拒否できる? 解雇予告手当や有給休暇、適切な対応を解説
- 不当解雇・退職勧奨
- 即日解雇
- 拒否
大阪府の統計年報によると、令和5年度に寄せられた労働相談の件数は1万5476件で、平成16年度以降最多となりました。解雇に関する相談は715件となっており、内容別の集計結果では5番目に件数の多い内容です。
突然会社の上司から即日解雇を告げられたら、誰でも驚きと不安の感情を抱くでしょう。即日解雇を拒否できるのか、どのように対処すべきなのか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、即日解雇と言われたときの適切な対応方法について、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和5年度労働相談統計年報」(大阪府)
1、即日解雇を言い渡されたら拒否できる?
解雇の理由や状況によっては法的に正当な即日解雇となることもありますが、即日解雇は違法となる可能性が高いものです。即日解雇を言い渡されたときは、まず解雇の理由や有効性を確認しましょう。
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(1)まずは解雇自体の有効性を確認する
即日解雇を言い渡された場合、最初に確認すべきなのは解雇自体の有効性です。
- 従業員の能力不足や企業秩序に反する行為・傷病による就業困難など、第三者から見てやむを得ないといえるような解雇理由がある(客観的合理的理由)
- 労働者の行為に対する相当な処分である(社会通念上の相当性)
この2つの条件を満たし、2章で解説する解雇予告手当が支払われていれば、即日解雇が正当な解雇と認められる可能性はあります。
なお、解雇の種類は大きく分けて3つです。どれに該当するかによって、有効な解雇と認められる要件や手続きが違います。
- 普通解雇:従業員が働かないといった理由(債務不履行)で、会社が社員を解雇すること
- 整理解雇:会社の経営状態の悪化などで余剰人員を整理するために、会社が社員を解雇すること
- 懲戒解雇:不正行為をしたなどの理由で、会社が制裁として従業員を解雇すること
法的に有効な解雇かどうかお客さまご自身で判断するのは難しいと思いますので、即日解雇をされてしまった場合には、まず弁護士に相談し、どの解雇にあたるのか、また有効な解雇なのか確認することをおすすめします。
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(2)自主退職を言い渡された場合は拒否できる
解雇ではなく自主退職を言い渡された場合、拒否が可能です。
会社側から従業員に対して自主的な退職をすすめることを、「退職勧奨」といいます。退職勧奨があったとしても、それに従う必要はありません。従業員自身の意思が優先されますので、退職の意思がない限り応じる必要はありません。
自主退職を言い渡されて、その場ですぐに受け入れるのは避けましょう。会社を辞めたくないのであれば、「自主退職に応じる意思はない」と明確に伝えることが重要です。 -
(3)限度を超えた退職勧奨は違法行為にあたる
会社側から従業員に対する限度を超えた退職勧奨は、違法行為です。
本来、退職勧奨自体は違法行為ではありません。しかし、会社側の言動や退職をすすめる方法に問題があると、違法とみなされるケースがあります。
たとえば、長時間かつ複数回にわたって、しつこく退職をすすめた場合や、退職に追い込む目的で意図的に仕事を減らした場合などです。また、退職させるために従業員を侮辱したり、脅迫したりするような言動も問題となります。
2、即日解雇されたら解雇予告手当や有給休暇はどうなる?
即日解雇された場合、その後の金銭的な補償や有給休暇の扱いが気になるところでしょう。以下では、解雇予告手当や有給休暇の取り扱いについて解説します。
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(1)解雇予告手当とは
解雇予告手当とは、解雇予告期間を設けずに従業員を解雇した場合に、会社が従業員に対して支払うお金です。
従業員を解雇する会社は、少なくとも30日前までに予告をしなければなりません。30日前までに予告をしなかった場合、不足している日数分の平均賃金を従業員に支払う必要があります。
したがって、即日解雇された場合は、原則として30日分の平均賃金を会社から受け取れます。
解雇を受け入れる場合は解雇予告手当の請求を検討する
即日解雇を受け入れる場合は、解雇予告手当の請求を検討しましょう。
30日前までに解雇が予告されていなかった場合、従業員は会社に対して解雇予告手当を請求する権利があります。即日解雇であれば30日分の平均賃金を受け取れる可能性があるため、その後の生活のためにも請求することをおすすめします。
解雇予告手当を請求する際は、口頭のやり取りだけでなく、書面で正式に請求して記録を残すようにしましょう。可能であれば弁護士に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。そのほうが、スムーズに請求手続きを進められる可能性が高まります。 -
(2)解雇が有効であれば有給休暇は使用できない
解雇が有効である場合、解雇後に有給休暇の使用はできません。解雇された時点で雇用関係が終了し、労働者としての権利は消滅するためです。
ただし、解雇を言い渡された場合は上記で説明したとおり、まず解雇自体の有効性を確認する必要があります。解雇に正当性がなく無効となれば雇用関係は継続し、有給休暇の消化ができるためです。
会社を辞めたくないのに解雇と言われた場合や、解雇に納得できない場合は早めに弁護士に相談して対策を講じましょう。
3、即日解雇された後の対応方法
即日解雇された場合は、どのように対処すべきかを考える必要があります。ここでは、解雇を受け入れる場合と、不当解雇として争う場合の対応方法をそれぞれ確認していきましょう。
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(1)解雇を受け入れて退職する場合
解雇を受け入れて退職する場合は、以下のような流れで対応しましょう。
- ① 「解雇」なのか「退職勧奨」なのか確認する
- ② 解雇の場合は解雇通知書・解雇理由証明書の発行を請求する
- ③ 解雇予告手当の請求を検討する
即日解雇を受け入れる場合であっても、不利な条件で退職するのは避けるべきです。解雇となった証拠を残すためにも、解雇通知書や解雇理由証明書は忘れずに受け取っておきましょう。
普通解雇や退職勧奨による退職は、基本的に会社都合退職の扱いとなります。しかし、自己都合退職とされてしまう可能性もあるため、会社都合退職になるかどうかは事前に確認が必要です。
また、解雇予告なしの即日解雇である場合、解雇予告手当の請求も検討する必要があります。 -
(2)不当解雇として受け入れない場合
不当解雇だと感じたら、解雇を受け入れずに撤回を求めましょう。対応の流れは以下のとおりです。
- ① 不当解雇の証拠を集める
- ② 弁護士に相談する
- ③ 会社と交渉を行う
- ④ 労働審判や裁判に移行する
まずは解雇理由が不当であることを証明するために、会社に対して解雇理由証明書の発行を請求します。就業規則や雇用契約書・上司とのやり取りの記録なども証拠となる可能性があるため、できるだけ収集しておきましょう。
また、解雇を言い渡されたら、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することも重要です。在職中の対策や今後の交渉についてなど、具体的なアドバイスを受けることができるからです。
会社との交渉で問題が解決しない場合は、労働審判や裁判などの法的手続きに移行します。労働審判や裁判で争う際にも、弁護士のサポートを受けながら対応するのが望ましいです。
弁護士に依頼するメリットは次の章で詳しく解説します。
4、労働トラブルを弁護士に相談するメリット
もし労働トラブルにあってしまったら、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士に相談する主なメリットを、以下で具体的に解説していきます。
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(1)解雇が法的に問題ないか確認できる
弁護士にご自身の解雇について法的な問題ないかどうかを確認することができます。
また、解雇の正当性を考慮する際は、解雇に至った理由や会社の対応などさまざまな要素を把握しなければなりません。そのため、自分だけで正しく判断するのは難しいケースも多いでしょう。
不当解雇に該当するかどうかは、弁護士に状況を伝えた上で判断してもらうことが重要です。適切な対応を行うためにも、疑問を感じたらまずは弁護士に相談してみてください。 -
(2)会社側との交渉を任せられる
弁護士に依頼すると、会社側との交渉を任せられます。
会社と直接交渉を行うのは、肉体的にも精神的にも負担を感じやすい作業です。労働問題に慣れていない人が交渉すると、不利な条件で合意してしまうリスクもあります。
弁護士に交渉を依頼すれば、負担を軽減できるだけでなく、希望に沿った形での問題解決を目指せるでしょう。 -
(3)訴訟に発展した場合に手続きなどを依頼できる
万が一労働審判や訴訟に発展した場合でも、弁護士に代理人として手続きを依頼できます。
交渉しても会社側が解雇の撤回を認めない場合、労働審判や裁判などを検討しなければなりません。裁判所が関与する手続きになると、法的知識や適切な書類作成・意見の主張などが求められるため、個人で対応するのは困難です。
弁護士に依頼すれば、裁判手続きに移行する判断から実際の手続きまで一貫して任せられます。
お問い合わせください。
5、まとめ
即日解雇を言い渡された場合でも、慌てずに落ち着いて対応することが大切です。労働契約法や労働基準法では、労働者を不当な解雇から守るルールが定められています。
また、辞めたくない状況であるにもかかわらず、会社から自主退職してほしいと言われた際には、明確に拒否することが重要です。また、解雇理由に納得できない場合や違法な解雇だと感じる場合は、泣き寝入りする必要はありません。
「自分の解雇は違法なのでは」と疑問に感じた方は、ベリーベスト法律事務所 東大阪布施オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています